スムーズな引き継ぎ・ダメな引き継ぎ

引き継ぎの手順や方法について知っておかないと、業務を離れてからも質問攻めを受けたり、周囲からの評価を大きく落とすことになります。また、普段の業務から見直すことによって、引き継ぎの効率は各段に上がります。効率良く仕事を進めるためにも、引き継ぎを意識してみましょう。

引継ぎイメージ

引き継ぎに向けた準備とは?

間もなく年度が替わります。それに合わせて異動の内示を受けたり、諸事情で職場を離れる方もいると思います。その際に、どのような準備をしておけばスムーズに業務を引き継ぐことができるでしょうか?

引き継ぎに向けた心構え

「相手に予備知識がない」ことが前提

私自身、様々な業務を引き継いだり引き継ぎを受けたり、他人の引き継ぎを見てきましたが、「これはだめだな」と思う引き継ぎの中でトップは相手に予備知識がないことを理解せず、専門用語やローカルでしか通用しないような言い回しをして、相手がついてこれないことです。逆に「それぐらい、分かるから」と言われるくらいの丁寧な説明がベストだと私は思っています。引き継ぎ内容の全部を相手が「それくらい分かるから。」「もう説明を受けたし」と言われるようになれば、漏れはないわけですからね。

同じ部署内にいる人に引き継ぐのであれば、まだ理解できる可能性もありますが、他部署からの異動者や、ましてや中途入社のような社員に引き継ぐのであれば、一般的な言い回しに変えたり、最初に用語説明などを行ったほうがいいでしょう。

仕事にせよ学習にせよ、理解で躓(つまず)くのは、1つ分からないことが出てきたときです。頭のいい人は大体、分からない部分が出ない人か分からないことが出た時に、すぐに理解に努める人です。

ただ、引き継ぐ相手が頭のいい人ばかりではありませんし、面識があまりない相手に質問をするのはかなり勇気が要ります。また相手の頭の良さに期待する引き継ぎは、やはりダメな引き継ぎなのです。

全体の流れの中で説明をする

次に残念な引き継ぎは、個々の業務を説明するような引き継ぎです。前述しましたが、相手に業務内容の予備知識がないとしたら、どれほど個々の業務を丁寧に説明をしても、全体の中で説明を受けている業務の位置づけができず混乱します。

最初は大まかでいいので、引き継ぐ業務全体のフローを説明し、その中で自分が間違えやすいポイント、特に注意をして処理する業務などを説明していくべきでしょう。

質問への回答を最優先にする

引き継ぎに使える時間は有限ですから、できるだけ早く説明を終わらせたいという気持ちはあるでしょう。退職など、引き継ぎを終えたら有休を消化できる時なんて特にそうだと思います。

ですが、基本的に相手から業務に関する質問をされた場合には、その回答を最優先にすべきです。「質問する=その業務が分からない」わけですから、先ほども述べた通り、相手の「分からないことの理解に努める」ことを手助けしないと、その部分から引き継ぎは失敗してしまうでしょう。

ましてや、相手の質問を遮って自分の説明をするなど論外です。

片手間での引き継ぎは絶対に避ける!

これは周囲の理解と協力も不可欠ですが、引き継ぎを行う場合、行う人も受ける人も、引き継ぎ業務に集中することが重要です。他の業務の合間や片手間での引き継ぎでは、当事者が引き継ぎに集中できないばかりか、情報が断片的になり、引き継ぐべき業務の一部が欠落したりします。

今までに体験した中で最も酷いと感じた引き継ぎは、担当者が期間中も引き継ぐ前のように業務を行い、時々思い出したように内容を説明し始めるというものでした。お陰で全体を理解するのに余計に手間がかかりました。余談ですが、業務内容もミスが多く、知らないことをいいことに私のせいにさせられそうになったことも度々ありました…

実際にやらせてみる

充実したマニュアルや丁寧な説明と対をなすのが体験です。どれだけ情報のインプットがあっても、相手が業務でアウトプットできなければ、意味がありません。

ですので、正解を知っているあなたがいる間に業務の成功を体験させておくことも重要です。

言ってみせ やってみせて させてみて 褒めてやらねば 人は動かじ

これは山本五十六という人が詠ったものですが、

インプット→アウトプット→自信

という流れを端的に示していると言えます。

引き継ぎの手引き

ではどのような引き継ぎが正解か、と聞かれると正しい答えを示すことはできません。ただ、悪い引き継ぎを挙げておいて「自分ならこうする」という解答を示さないのも意味がありませんので、私が行ったりアドバイスをしている引き継ぎの方法をご紹介します。あくまでも参考として読んで頂き、より良い方法があれば改良して頂ければと思います。

全体のフローをマニュアライズする

まずは全体の流れをフローチャートのような形でマニュアライズします。口頭で説明するだけでは、説明と理解の間でズレが生じることが多いので、ビジュアル化しましょう。

マニュアライズは時系列に沿ったフローチャートにしても、中央に業務内容を置いて、派生する関連業務を枝分かれにしても構わないと思いますが、私は時系列でまとめています。

説明は全体→個別

あくまでもフローは全体から個別の一方通行にしておきましょう。いきなり個別の業務を説明するのはNGです。相手からしたら、その業務が全体の中でどういう位置づけかを理解できません。

引き継ぎを意識したマニュアル作りが仕事の効率を上げる!

実は、引き継ぎを意識したマニュアルを日頃から作ることは、普段の業務効率を上げることにもつながります。

というのも、お伝えしたように予備知識がない人への説明を前提として作成したマニュアルを読み返すと、ルーチン化した業務では気付かないことを知ることができたりするのです。「ここをこうしたら効率が良くなるんじゃないかな」「読み返してみたら、ここのデータはあちこちで使うから、Excelで関数を引っ張っておいたらいいんじゃないかな」と色々なアイデアが出てくるのです。

自分の業務をまとめる程度の余裕がある人はぜひお試しください。

最後に

年を越すと、1月は正月を含め祝日も多く、2月は元々28日と少ない。また3月に入れば異動の内示もあるため、年度末まであっという間になります。

余裕のある人は「いつか誰かに引き継ぐ」ための業務マニュアルを作ってみてはいかがでしょうか?